08年から始まった爆音映画祭も、今年で4回目を迎えます。
今年は3月11日以降、日本の状況がすっかり変わり、映画を取り巻く環境も大きく変容していく、
そんな気配をひしひしと感じています。

今年の爆音映画祭はそんな状況の中、映画はいかに「その後」の世界を描き、
世界の変容と対面してきたかを意識しつつ、上映作品の選考にあたってきました。

音楽ライヴ用のサウンドシステムを使って映画を爆音で上映する爆音上映は、
1本の映画の描く世界を「爆音」を通して見る、映画の新しい見方です。

それまでその映画の奥底に潜んでいた何かが爆音上映によって生き生きと立ち現れる。
かつて見たその映画とはまったく違うその映画の姿に驚き、新たな体験をする。
つまりそれ爆音上映自体が、世界の変容とその後を体験することでもあるのです。

つまり今回の爆音映画祭は、現実の世界の変容とその変容をうけて選ばれた作品に
描かれる世界の変容と、そして爆音上映による世界の変容。

その3つの変容の連鎖によって立ち現れる何かを見る、今年の爆音映画祭はそんな映画祭になるはずです。
映画を見ること生きることの喜び、そしてそのことによる世界とわれわれが変化するそのダイナミックな
躍動感とともに、爆音上映をお楽しみいただけたらと思います。

2011年5月 樋口泰人(boid/爆音映画祭プロデューサー)

2008年にスタートした爆音映画祭は、2004年5月から断続的にオールナイトおよびレイト開催されてきた「爆音上映企画イヴェント」を拡大し、映画だけでなくライヴ演奏や、映画と音を巡る講演などさまざまな角度から映画と音を見ていく、聴いていく催しです。

爆音上映とは、通常の映画用の音響セッティングではなく、音楽ライヴ用の音響セッティングをフルに使い、ボリュームも限界まで上げ大音響の中で映画を見・聴く試みです。

一般劇場上映では聴くことの出来ない迫力と、その爆音によって視覚までもが変容して映画そのものも違って見えるトリップ感覚、そしてまた、大音響でなければ聞こえてこない幽かな音を聴くという、大胆かつ繊細な上映となります。


もちろん「爆音」とは言っても音を大きくするだけではありません。その映画にとって最適な音とは何か、その音があることによって映画が違って見えてくるそれぞれの映画における音の核心はどこにあるのか?そんな映画におけるベストな音の探求こそ、爆音上映の醍醐味です。映画にとっての最良の音、最適な音が爆音映画祭にはあります。

その大音響の中で、かつて見たことのある映画がまったく新しい映画として蘇ってくる、いわば〈映画の再生〉の瞬間に立ち会える喜びを、多くの人と分かち合いたいと考えます。

映画の本質である映像と音を効果的に活かした作品を幅広く選択し、観客の皆さんとともに考える場として、世界中を見渡しても他に例を見ない映画祭といえると思います。




後援:武蔵野市    主催:boid , 吉祥寺バウスシアター    Illustration:Keiko Sekikawa    © Bakuon Film Festival 2011 allrights reserved.