性交の真っ最中、自分の身体に異変を感じた男は、驚異的 な手際のよさで野菜とソーセージを炒める。食欲を満たす ことで性欲をチャラにしようとでもいうかのようだ。まる で人類が初めて食物を口にするかのように息つまる緊迫感 が張りつめるさなか、男の震える手が差し出す、フォーク に突き刺された食材を女がいやらしく齧るとき、そこには ありえない間隙が、映像と音のはざまにぶっきらぼうに穿 たれる。その身振りとはちぐはぐに悲鳴をあげる爆発音、 金属音、銃撃音はしかし、いったい、どこからやってきた のか。それは未来であるといってしまいたくなる。絶えざ る増殖のすえ、ついに巨大な男根型の戦闘機と化した鉄男 によって、鋼鉄の塊にされた世界、そして、世界中を錆び 腐らされ、宇宙の藻屑へと返されたあとに響く、時空を超 えた断末魔の叫びである。

ある朝、男は自らの頬に鉄の吹き出物を 見つけ、その日を境に肉体はだんだんと鉄 に侵されていく。すべての始まりは、かつ て男が引き起こした交通事故だった。この 肉体の変化はそのとき遺棄した“ ヤツ”か らの復讐だったのだ。ふたりが再び出会う とき、サイバーパンクでインダストリアル な最終戦争の火蓋が切って落とされる。

咀嚼する女の荒唐無稽な金属音。鉄男と“ヤツ”が最後に繰り広げる壮絶きわまる金属バトル。