映画祭事務局セレクション
ザ・バンドの解散ライヴ。アメリカの音が溢れかえる
ラスト・ワルツ
5/30(日) 11:00   5/31(月) 16:00
1978年/116分/35mm/アメリカ
提供:アダンソニア
監督:マーティン・スコセッシ
出演:ザ・バンド、ボブ・ディラン
 
爆音とは何か?それは未だ知られざる既知との遭遇である。 フィルムの隅っこに既に刻まれた潜在的な可能性を、繊細に して大胆な音響調整によって叩き起し、既に知っていたはず のものが未知なる表情を纏い、立ち騒ぐのを誘導すること。 その意味において爆音とは霊媒みたいなものでもある。だ から開巻して間もなく“THIS FILM SHOULD BE PLAYED LOUD” なんて挑発ともとれる但し書きを見せつけられたら 受けて立つほかない。これは30余年前に予めしたためられた 爆音への伝言であり、ようやくこの伝言が実を結び、本来 の望ましいかたちで上映されるというわけだ。あとはただ The Band とゴージャスな面々が奏でるロックンロールに 全身を委ねるだけだ。音楽に殉死するなんてまっぴらゴメ ンだなんて呟きながら、諦念として口ずさまれていたはず の“I shall be released” の歌声はいま、西東京から昇る太 陽の眩しさに叩き起された生ける屍として、劇場を好き放 題に暴れ回ることができる。もはや完全に自由の身である。
1976 年11 月25 日サンフランシスコ。 この時この場所で行われたフェアウェル・ コンサートでザ・バンドの16 年の活動に 終止符が打たれる。B・ディラン、N・ヤング、 R・スター……ロックの輝かしい星たちと の共演を通して彩られる「ラスト・ワルツ」 の、M・スコセッシによるザ・バンドと音 楽への愛が込められたドキュメント。
演奏の細部ではなく全体を、登場する 固有名ではなく彼らが生きた時代の音とし て、本作の音を聞いてみたい。