ライヴ枠『一押しコメント』 text by map

5月17日(土)  かえる目(かえる・もく)
彦根の賢人・細馬弘通の脳裏に広がる微妙に地軸の狂った一大ポップ絵巻、それを具現化しようと重い腰を浮かせた手練れの男衆3名(宇波拓・中尾勘二・木下和重)。絶妙の“枯れ”の引力を持つ細馬の歌声は、生きることの虚しさすら健忘状態にしてくれるものだ。

5月18日(日)  トクマルシューゴ
ひとつの音、響き自体が悦びを持って踊り出すキャンディ・ポップ、なのにその奥底にドクドクと流れる毒の味を知ったとき、既に彼の音の中毒になっていることに気付かされる、はず。
眼鏡の奥に見せる音楽家としての野心と演奏家としての指遣いを見よ、そして畏れよ!

5月19日(月)  テニスコーツ&梅田哲也
たとえばさらりと流れるドローンのひとつが、彫刻で彫り上げられたかのようなゴツゴツとした手触りを感じさせるテニスコーツの音楽。そこに世にある音のすべてを覚醒させる力を持った梅田哲也が関わる瞬間、あたかもオーロラのように空気の色が変わるのが分かるだろう。

レクチャー枠『一押しコメント』  

5月20日(火)  特別上映:『夜よ、こんにちは』 (監督:マルコ・ベロッキオ)
赤坂大輔(映画批評家)  
「完璧さ」に支配されたオーディオヴィジュアルの日常に浸かっている危険を喚起し、「未知の音と映像の組み合わせ」と「他者性」との出会いの場所として映画館を新たに発見するプログラムのための提言。

5月21日(水)  特別上映:『ヌーヴェルヴァーグ』(監督:ジャン=リュック・ゴダール)  
※上映権利切れのため、日本最終上映

佐々木敦(音楽・映画・文学批評家/HEADZ主宰)
ゴダールは、ソニマージュ、すなわち「サウンド×イメージ」の原理を絶えず問い直し、問い続けることで、不可避的にその形式性をアップデートしている。『ヌーヴェルヴァーグ』はそのひとつの極点と言える作品である。そこには「映画」と「歴史」が、そして「映画」と「現実」が、いかように関係を切り結び得るのか、という問いへの、真摯にして大胆不敵な試行がある。時間の許す限り、その構造に迫ってみたい。

5月22日(木)   特別上映:『風の又三郎』(監督:黒沢清、音楽:大友良英)   ※TV放映作品
大友良英(ミュージシャン/映画音楽家) 
聞き手:須川善行(書籍編集者)

世界で最初のトーキー映画は、アメリカの『ジャズ・シンガー』。では、イギリスでは? フランスでは? ドイツでは? 日本では?それぞれの国において映画から音への最初の取り組みはどのようなものだったのか、そしてそこでは何が目指されていたのか?映像と音との接続を試みてきた大友良英が現場の体験をふまえつつ、両者の関係の歴史について語る。