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それまでは別々の道をたどってきたアメリカにおける白人と黒人のポピュラー・ミュージックは、50年代に入って一気に接近を始める。 ロックンロールと呼ばれたそれは、もちろん白人の側からの歩み寄りではあったのだが、60年代に入ると黒人の側からもそれが始まる。 その筆頭が「モータウン」であることはすでに何度も語られてきたし、それを巡って白人の側からも黒人の側からもさまざまな見解が述べられてきた。 そこには血まみれの闘争があり、和解があり、愛と憎しみがうずまき、そして欲望と正義と野心と挫折とがかわるがわるさまざまな人々を支配してきた。 あるいは、闘争も和解も必要としない衝撃的な一瞬の出会いのようなものもあったかもしれないし、穏やかで控えめでしかし強固な接近のようなものもあったかもしれない。 いずれにしても、決して交わるはずのなかった道が緩やかに激しく重なり合い、美しくもあり耳障りでもあり存在そのものを揺さぶりもするその共鳴音を、世界の果てまで響かせたのだった。 『ブラック・スネーク・モーン』はひたすらその共鳴音を語る。 重い鎖の摩擦音、轟く雷鳴、そして蛇のようにうねるギターの響き。 かつて起こり、そして今もなお微かなエコーとして残響するそれを増幅し、その振幅の中に我々を置く。 『ドリームガールズ』『ソウル・サヴァイヴァー』『シャフト』『ハッスル&フロウ』で語られるのは、すべてその振幅の中で起こったことだ。 『ドリームガールズ』の登場人物たちは実在する『ソウル・サヴァイヴァー』の出演者たちと重なり合い、その最後に登場するアイザック・ヘイズの音楽が『シャフト』の物語を呼び起こす。 かつてメンフィスのSTAXを支えた彼の音楽は、タランティーノの『デス・プルーフ』でしきりに映されるジュークボックスとも響きあっているだろう。 そして年老いたアイザック・ヘイズが経営する酒場で主人公とリュダクリスが扮するヒップ・ホップ・スターが出会う『ハッスル&フロウ』。 重なり合う歴史がそこでは層をなし、空気は淀み、人々の血と汗と涙が更にその空気を濁らせる。 だがそこで何かが生まれたのだ。 そこで生まれた者、生き残った者たちの微かなうめきを、増幅させられたらと思う。 |